泌尿器がん
泌尿器がん
泌尿器がんとは、腎実質・腎盂・尿管・膀胱・尿道からなる尿路、および前立腺、精嚢、陰茎などの生殖器、そして副腎や後腹膜の腫瘍を指します。
前立腺は男性のみにある臓器で膀胱と尿道の付け根に位置し、尿道をぐるりと取り囲んでいます。生命を維持する働きはありませんが精液の一部を生成、また排尿に関与しています。前立腺がんは50歳以後、加齢とともに発生しその頻度は増加します。アメリカでは男性のがんの中でも最も頻度が高く、日本でも近年食生活の欧米化や高齢化によって急激に増加しています。前立腺がんの初期の段階では自覚症状がほとんどありませんが、がんが進行すると排尿障害(尿が出にくい、残った感じがする、尿が近い、尿に血液が混じるなど)や転移部位の症状(腰の痛みなど)が出てきます。多くの場合ゆっくり進行し、早期に発見すれば治癒することが可能ですが、転移をともなうと治癒が困難となります。したがって早期発見が非常に重要な疾患といえます。
そのため50歳を過ぎたら毎年前立腺がん検診を受けることをお奨めいたします。前立腺には前立腺特異抗原(PSA)というタンパク質が含まれています。前立腺以外の臓器では作られていないため、PSAの値は前立腺内部のできごと(がん、肥大症、炎症)を反映すると考えます。つまり、前立腺がんが存在する場合、PSAが高ければ高いほどがんの可能性は高く、また進行しつつあることを意味します。年齢階層別に望ましい値が設定されていますが、3~4ng/mlを超えるときは基準に照らし合わせて泌尿器科専門医を受診していただき、触診、超音波、MRIで判断し、がんの疑いが否定できない場合は前立腺の組織検査(前立腺生検)の検討が奨められます。前立腺がんと診断された場合は、進行の状況(ステージ)を画像で調べた上で年齢、他の治療中の疾患、進行の具合、患者様のお考えを踏まえて手術、放射線、薬物療法など治療方法を検討します。
膀胱がんは泌尿器がんの中でも頻度の高いがんの一つで9割以上は膀胱の内部をおおう尿路上皮に発生します。発症リスクとして喫煙者は非喫煙者の2-4倍高く、比較的男性に多い疾患です。よくみられる症状として、痛み刺激などを伴わない血尿(無症候性血尿)、頻尿、排尿時痛、残尿感が挙げられます。膀胱がんの診断には膀胱鏡が必須ですが、その他細胞診、超音波、CT、MRIなどでがんの深さ、広がりを調べます。治療はまず診断と治療を兼ね、経尿道的に内視鏡切除(TUR-BT)を行います。病理検査の結果を見て悪性であれば深さ(浸潤度)、転移を調べた上でその後の治療(BCG膀胱内注入療法、膀胱全摘、薬物療法)を検討していきます。
腎臓は全身の古い血液をろ過し尿を生成する臓器で、握りこぶし大、そら豆のような形をし、背中の両側に位置しています。腎がんはこの腎臓の尿細管から発生するがんで男性にやや多く、加齢と共に罹患率が高くなります。
進行するとお腹に腫瘤を触れたり、血尿やわき腹の痛みなどの症状を認めますが、最近は検診やドックで超音波検査からCT検査を行う機会が増えたため、早期のうちに偶然見つかる機会が増えています。腎がんと診断された場合は腫瘍の位置、大きさ、進行により治療方針を考えていきます。治療の基本は切除ですが、腫瘍が小さく周辺臓器や血管、構造物と離れている場合は正常部位を残し、腫瘍だけを取り除くことも可能です。同じ腎臓にできたがんでも、腎臓の中心部にある尿が集まる腎盂にある細胞ががん化したものは「腎盂がん」と呼ばれ、腎細胞がんとは異なるグループとして扱われます。
精巣腫瘍は精巣(こうがん)にできる悪性腫瘍で20-30歳代の若い男性に多く、この年代の男性に発生する悪性腫瘍の中で最も多いと言われています。10万人あたりの罹患率は約1人です。多くの場合痛みを伴わない精巣のしこり、腫れによって見つかります。進行が早く、肺や腹部のリンパ節に転移しやすい病気ですが現代では治療の進歩により90%以上の人が完治できます。早期診断・早期治療が非常に重要であり、精巣の左右の大きさが違う、精巣が大きくなった、精巣にしこりがあるなど自覚された場合は早めの診察が必要です。